clothe Ⅰ

見た者の感情を「動かす」、衝撃・感動・共鳴を生むアートに贈る賞

clothe Ⅰ

のぐちあやの（ノグチアヤノ）

社会人2年目頃、疲れや不安・焦りが溜まり、あらゆる感覚が過敏になった。他人と共有しなければならない空気の澱みに、もはや気体というより粘体に漬け込まれているのではないかという息苦しさを覚えた。しかし、癒しを与えてくれるのもまた、繊細な感覚たちなのだと知ることができた。

例えば、雨上がりの湿った空気に、春の訪れを捉えて。10本指の爪それぞれに、違う色のマニキュアを塗って。過剰な刺激に沸き立つ感覚たちを、無理に押さえ込むのではなく、ときには自由に放っぽり出すことで、「感覚に身を委ねる心地よさ」も見つけられることを知ってほしい。 ※文字数を超過してしまいますが、この作品コンセプトである創作詩も紹介させていただければと思います ----- 「clothe」 赤は　歪みを尊重し 青は　光を溶かして 黄色は　尖りを丸く和らげ 緑は　境目を穏やかに緩める 紫は　石灰のように隙間を埋めて 橙色は　踊るポンプさながら 膨れては縮かんで　全体の調和を図る   すべての色が 優しい温度をもって　重なり合い 大らかに　確かな力で　包み込んでくれる   特別　それを感じる日が ごく稀にある -----

目紛しいインプット・アウトプットの渦に翻弄されながらも、前進し続けることが当たり前になってしまった現代社会。そのプレッシャーから、神経過敏に悩まされている人たちにこそ、感覚への視点を変えるきっかけ作りとして届けたい。

リビングやカフェなど、ひと息ついて落ち着ける場所に飾ってほしい。 お茶を飲みながら、または、何にもせずに、ただぼんやりと眺めて、自身の五感に意識を向け、じっくり浸ってもらいたい。